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コンバージョンにつながるバイヤーペルソナの作り方|重要性と成功事例

作成者: 奥川駿平|Mar 26, 2023 10:02:27 PM

「私はこれが好き」「こんなにすごい経歴がある」「こんなこともできるんだよ」、自分のことばかり話すデート相手は退屈で、これからも関係を維持したいとは思えませんよね。それはコンテンツマーケティングも同じ。コンテンツマーケティングで成果を出すには、顧客にとって最適なタイミングで、最適な価値を提供することが重要です。

それでは、あなたの顧客はどのような課題や目標を抱えていますか?この問いに答えられない場合、自社が伝えたいメッセージばかり発信する自分本位な施策展開をしている可能性があります。

そこで役に立つのがバイヤーペルソナです。バイヤーペルソナとは、実在する顧客データをもとにした顧客像のこと。顧客の悩みや価値観、目標などを設定するため、顧客視点に立つ施策展開が可能になります。本記事では、マーケティングに活用できるバイヤーペルソナの作成方法を解説します。

バイヤーペルソナの重要性

コンテンツマーケティングを進めるうえで、よく用いられるのは性別や年齢、収入などのデモグラフィック(人口統計的要素)でセグメント分けしたターゲットです。

  • 東京都練馬区在住
  • 10歳の小学生
  • 勉強が苦手
  • 中流階級

上記はターゲットの例ですが、ドラえもんに登場するのび太とジャイアンが該当します。ターゲットという大きなセグメントで見ると、のび太とジャイアンは同じですが、一人の人間としてみたとき、彼らは大きく異なる人間だとわかるはずです。当然ながら、のび太とジャイアンが同じような悩みを持ち、同じような行動をする可能性は極めて低いでしょう。

従来のターゲットでは、ユーザーの課題や悩み、購買動機などは理解できないため、「ターゲットはきっとこのような悩みを抱えているだろう」「ターゲットはこういう理由で自社を選ぶはず」などのように主観や推測にもとづいた不正確な施策展開となるわけです。

ターゲットが抱える課題や悩み、情報収集で利用するチャネル、自社を選ぶ理由などを正確に把握しないで、効果的に目標達成できるでしょうか。推測にもとづいた施策展開では、限られた時間と予算を浪費するだけになるリスクが高いです。だからこそ、実在する顧客と対話をし、顧客理解を深めたうえでバイヤーペルソナを作成して、それをメンバーや他部門と共有しなければいけません。

良いバイヤーペルソナと悪いバイヤーペルソナの例

まずは悪いバイヤーペルソナの例を見ていきましょう。

  • 名前 ジョン
  • 性別: 男性
  • 年齢:30~40歳
  • 居住地:東京都
  • 職業:テック系企業
  • 家族構成:妻と2人の子供
  • 趣味:サウナ

これらの情報を見ても、顧客の悩みや購買動機は一切わかりません。予算を投下するべきチャネルや発信メッセージなどの立案につながらないため、悪いペルソナといえます。

一方、良いペルソナとは下記のようなものです。

  • 名前 サラ
  • 年齢: 32歳2児のワーキングマザー、郊外在住
  • 職業:オンライン英会話企業のマーケティング担当者
  • 目標:忙しい仕事と家庭の両立
  • 課題:1日にすべてをこなすのに十分な時間の確保に苦労。家族(特に子供)と過ごす時間をもっと大切にしたいが、仕事や家事に追われる日々を送っている。
  • 価値観:家族、ワークライフバランス、効率、利便性
  • 情報収集チャネル:Google、Instagram、Twitter

このペルソナを見れば、目標や課題、価値観などの購買動機に関連する具体的な情報が分かります。例えば、転職サイト運営企業のマーケティング担当者は、このペルソナから下記施策を立案できるでしょう。

  • チャネル:リスティング広告とInstagram広告の出稿
  • キーメッセージ:「リモート求人で家事/育児を両立」
  • 自社ならではの強み:アドバイザーの多くがワーママ

このように具体的な戦略立案につながるペルソナの作成を目指しましょう。

バイヤーペルソナ作成で重要な項目

バイヤーペルソナ作成はコンテンツマーケティングのファーストステップであり、大きな時間を費やすべきではありません。バイヤーペルソナを効率よく作成するには、サイコグラフィック(心理的な特徴)の作成、特に以下項目に注力するのが有効です。

  • 課題や悩み
  • 課題を解決したい理由
  • 目標
  • 自社を選んだ理由
  • 情報収集チャネル

これらの項目を明確にすれば、注力すべきチャネルやキーメッセージなどが判明します。サイコグラフィックの制作に時間をかけ、名前や性別、居住地などのデモグラフィックは素早く制作しましょう。

実際に使える精度の高いバイヤーペルソナの作成ステップ

株式会社イノーバがBtoBマーケターを対象にした調査では、約6割が「様々なパターンのペルソナ設計による施策への活用ができていない」と回答しています。使えるバイヤーペルソナを作成できない理由は、質の低い情報や情報不足などさまざまです。ここからは、マーケティング施策に使える精度の高いペルソナの作成ステップを解説します。

ステップ1:ユーザーインタビュー

精度の高いペルソナの作成には、実在する顧客の声の収集は欠かせません。「時間がかかる...」「面倒くさい...」と思われるかもしれません。ここでもデートの例で考えたいのですが、あなたが本当に付き合いたいと思う相手がいたとき、実際に対話をして相手への理解を深めますよね。評判やSNSだけを見聞きして、告白する人はほぼいないでしょう。

それでは、なぜバイヤーペルソナ作成において顧客と対話しないのでしょうか。実際の顧客と対話すれば、自社の強みやリアルな課題などが判明し、顧客理解や意思決定のスピードが大きく上がります。ユーザーインタビューでは、「誰に」インタビューをするのかが重要になります。

よく「理想の顧客」「ロイヤルカスタマー」へのインタビューが推奨されていますが、自社との関係歴が長い顧客ほど、記憶があいまいになっている可能性が高いです。購買動機や自社を選んだ理由などで、正確な情報収集ができない可能性があるため、私は新規顧客へのインタビューを推奨しています。新規顧客ならば、自社の発見から選んだ理由までよく覚えているためです。

出典:U-Site「5人のユーザーでテストすれば十分な理由」

なお人数に関しては、ニールセン博士が数多くのユーザービリティ・プロジェクトを調査した結果、5人のユーザーインタビューで十分なインサイトを得られると判明。上の表は、テストユーザーの数と発見したユーザビリティの課題数を表したものです。3人のユーザーテストをした時点で、約7割の課題を発見し、5人目を超えると新たなインサイトは得られません。これはユーザーインタビューにも該当すると仮定すれば、5人のインタビューで十分だと考えられます。

ステップ2:追加情報の収集

ユーザーインタビューで十分な情報を収集しきれなかった、もしくはユーザーインタビューができない場合は、追加で情報収集します。繰り返しになりますが、ペルソナ作成では実在する顧客の声の収集が重要のため、下記リソースの利用を推奨します。

  • アンケート調査
  • 商談への動向
  • 営業やインサイドセールス、カスタマーサクセスなど顧客と直接コミュニケーションをとる部門へのヒアリング
  • 自社/競合他社の事例記事
  • GoogleアナリティクスやCRMツールなどのデータ
  • SNS
  • レビュー/口コミサイト

ステップ3:ペルソナの作成

集めた顧客情報をもとにペルソナの作成をします。ペルソナは1人である必要はありません。例えば、スタートアップ・中小企業・大企業のように購入プロセスや抱える課題が異なる場合、各セグメントに応じてペルソナを作成しましょう。

ペルソナはエクセルやスプレッドシート、Canvaなどでも作成できますが、簡単にわかりやすいペルソナを作成したいのなら、HubSpotのペルソナ作成ツールがおすすめです。質問に順番に回答するだけで、下記のようなペルソナシートが完成します。

出典:HubSpot

ステップ4:競合分析

ペルソナの課題や情報収集チャネルが分かったので、すぐに施策展開したいところですが、まずは競合分析をしましょう。例えば、ペルソナがGoogle検索をしているからと、SEO対策に取り組んだとしても、競合の多くがSEOに取り組んでいる場合、勝ち目の少ないレッドオーシャンに飛び込むことになります。競合の公式サイトやSNSなどを確認し、自社の勝ち目がある施策を特定しましょう。

ステップ5:カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーマップを作成して、ペルソナの各購買プロセスにおける課題や行動、心理、接点チャネル、キーメッセージなどをまとめましょう。特にスタイルにこだわりがなければ、ChatGPTに必要情報を与えれば、下記のようなカスタマージャーニーマップを簡単に作成できます。

ステージ 顧客の課題 顧客の行動 接点 自社の施策
認知 SaaS企業の存在を知らない インターネット検索、SNS、口コミ、広告による情報収集 検索エンジン、SNS、広告、口コミ、ウェブサイト SEO対策、SNS広告、コンテンツマーケティング、ブランド露出の増加
興味 サービスの機能や利点を知りたい ウェブサイトでの情報収集、無料トライアル・デモ申し込み ウェブサイト、SNS、広告、メール 詳細な情報提供、トライアル・デモ提供、メールマーケティング
試用 サービスの使い勝手や機能に不安がある サービスの体験、機能・操作の評価 ウェブサイト、サービス、サポートセンター、メール 丁寧なサポート、トライアル期間中のフォローアップ、使い勝手向上の改善
購入 サービスの価格や支払い方法について知りたい ウェブサイトでの購入手続き、サポートの問い合わせ ウェブサイト、サービス、サポートセンター、メール、電話 スムーズな購入手続き、安心して使える支払い方法の提供、丁寧なサポート
利用 サービスの使い方について不明点がある サービスの利用、サポートの利用 サービス、サポートセンター、メール、電話 使い方の説明、使い勝手の向上、迅速なサポート
サポート サービスの不具合や疑問に対して迅速な対応が欲しい サポートの利用、問題の報告 サポートセンター、メール、電話 迅速な対応、丁寧な対応、問題解決に向けたアクションを迅速に取る

ペルソナ活用の事例

私はTwitterで惚気アカウントを運用しており、最大で1万人近くのフォロワーを獲得しました。はじめのうちは、特に何も考えずに運用して、2千人近くまでフォロワーを伸ばすことに成功。しかし、そこからフォロワーが伸びなくなったのです。

アカウント分析をしてみると、500以上のいいねがつくツイートや拡散性の高いツイートに1つの共通点があると判明。それは、相互フォローしているあるユーザー(Aさんとしましょう)がリツイートしているということです。Aさんのフォロワー数は約800と決して多くはありませんが、どのバズツイートも必ずそのAさんが反応していました。

そこで私は、Aさんにだけ向けてツイートを作成することにします。つまり、Aさんをペルソナにしたのです。まずはAさんのツイート内容やエンゲージメント歴などをもとに、Aさんの好みや興味関心を分析して、Aさんは映画や漫画のような恋愛に興味があるとわかりました。分析結果を反映するため、いつものユーモアを交えた惚気ではなく、Aさんが頭の中で具体なシーンをイメージできるように、セリフや情景描写を多めにしたツイートを作成。

12時20分から40分の間にツイートすれば、Aさんからの反応率が高くなるとわかっていたので、12時半にツイート。結果、ツイート直後にAさんから引用リツイートをしてもらえ、いいね数30万件以上、リツイート数6万件以上にまで伸びました。フォロワーが4,000人あたりになってくると、アルゼンチンやユーモアのある惚気、名言系などフォロワーニーズも増えたので、ジャンルごとにペルソナを設定し、各ペルソナに向けてツイートを発信しました。

コンテンツマーケティングにおいては、多くのユーザーにリーチできますが、マスをターゲットにしては誰にも刺さりません。特定の一人についての理解を深め、その人に向けてメッセージを発信することで、多くの人に刺さるわけです。

まとめ

  • デモグラフィックを設定しただけのターゲットはマーケティングに役立たない
  • 実在する顧客の声をもとに、一人の顧客理解を徹底的に深めたペルソナ作成
  • 顧客の課題や購買動機などのサイコグラフィックに注力
  • リサーチを通して得たすべてのインサイトを反映